Page top

BLOG

  • 代表BLOG
  • 東京BLOG
  • 名古屋BLOG
  • English
  • 中文
  • 한국어

KUNPU NEWS

2015年1月号のKUNPU NEWSをアップしました。
2015.01.19
 KUNPU NEWS 2014年7月号では、現在特許制度小委員会にて議論が行われている、「職務発明制度」に関する記事を掲載しました。
今回は、2014年7月以降に行われた小委員会(主に、第9回の議論)の討議内容を、「職務発明制度の見直しについて・続編」と題して掲載します。尚、第9回特許制度小委員会は、第6回~第8回特許制度小委員会で議論された論点等を基に、現行の職務発明制度を議論しています。このため、第6回~第8回特許制度小委員会の内容は割愛いたします。
1.職務発明制度の見直しの背景
現行の職務発明制度は、使用者等にとって発明の対価額の予測可能性を高めると共に、従業者等の発明評価に対する納得感を高めるとの趣旨で改正されたものです。
しかし、依然として発明の対価を巡って訴訟に発展するケースは少なくありません。
また、法的予見性の低い制度である、と産業界等から指摘されています。
更に、オープン・イノベーション等、企業の事業戦略の障害となり得る事象も発生する恐れがあります。
これらの指摘等を受けて、特許庁は、「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会」を設置し、研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保並びに、企業の国際競争力の強化及びイノベーションの促進の観点から職務発明制度の見直しを審議することとなりました。
2.特許制度小委員会における議論内容
2014年10月17日、特許庁の特許制度小委員会より、「職務発明制度の見直しの方向性(案)」が示されました。この案には、①特許を受ける権利を初めから使用者等帰属とする、②現行の法定対価請求権又はそれと同等の権利を保障する、③政府が使用者等と従業者等の調整に関するガイドラインを策定する、との方針が示されていました。
第9回特許制度小委員会では、この案に対する説明及び議論がなされ、①特許を受ける権利を初めから使用者等帰属とする、との方針に対しては、職務発明に関する規程等を整備する余力のない中小企業や、特許を受ける権利は研究者に帰属する方がよい場合がある大学など、「初めから使用者等帰属とする」ことは良しとしない場面が考えられるとの意見が挙げられていました。
その結果、特許を受ける権利を初めから使用者等帰属とするとした場合であっても、契約や別段の定め等で発明者帰属を認めるといった柔軟な制度とする必要があるとの一つの論点が示されていました。
また、②現行の法定対価請求権又はそれと同等の権利を保障する、との方針に対しては、「対価」との文言は「金銭」を想起するものであるところ、改正にあたっては、「金銭」だけでなく、「昇級」や「留学」などの金銭以外の「処遇」や、研究費などの「給付」等が包含された「対価」であることを明確にしていく必要がある、との議論がなされていたようです。
更に、③政府が、使用者等と従業者等の調整に関するガイドラインを策定する、との方針に対しては、委員の先生方一致で「有用である」との議論がなされており、これにより発明者の権利、インセンティブを確保していくことが必須であるとの議論がされています。
尚、この第9回特許制度小委員会では、メディアの表現(会社が従業員から権利を取り上げてしまうなど)に対しても触れられており、これに対してはイメージの払拭をしなければならないとの方針も示されていました。
3.まとめ
第9回特許制度小委員会の討議内容及び風潮からすれば、「特許を受ける権利は原則として使用者に帰属させるとする使用者主義」へと改正されるものと思料します。
そして、第9回特許制度小委員会では、使用者等と従業者等の調整(従業者等との協議や意見聴取等)に関するガイドラインに示す条件が重要であることが示されていました。
しかし、従業者等の研究開発活動に対するインセンティブの確保と、使用者等の国際競争力及びイノベーションの強化とを共に実現し、更には、メディアで取り上げられているような、開発者などの人を含めた「技術流出」の障壁となるような規定等(ガイドライン等)の策定は難航しそうです。
尚、政府は、今年の通常国会での特許法改正を目指しています。