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KUNPU NEWS

2015年5月号のKUNPU NEWSをアップしました。
2015.05.14
1.特許法74条に規定された内容
平成23年6月に特許法等の一部改正法が公布され、平成24年4月1日から該改正法が施行されました。
その主要な改正項目の一つに、冒認出願(特許を受ける権利のない者がした出願)や共同出願(2人以上の者が出願人となっている出願)違反に係る特許権の移転請求制度があります(特許法74条)。
この制度は、そもそも、「真の特許を受ける権利を有する者」が、自ら特許出願をしていない状況であっても、権原のない他人が取得してしまった特許権に対して移転を求めることができる制度です。
近年、複数の企業同士、大学同士、または企業と大学の間で、共同して技術や製品の開発をすることは一般に良く見られますが、この場合、冒認出願や共同出願に違反する出願が行われ、訴訟に至るケースが存在するため、このようなケースにおける真の権利者の保護をより確実なものにしようというのが、本改正の趣旨です。
施行から丸3年が経過しましたが、真の権利者の保護を図るうえで実務上重要な改正ということもあり、特集記事に取り上げました。
条文は以下のとおりです。
1. 特許が第123条第1項第2号に規定する要件に該当するとき(その特許が第38条の規定に違反してされたときに限る。)又は同項第6号に規定する要件に該当するときは、当該特許に係る発明について特許を受ける権利を有する者は、経済産業省令で定めるところにより、その特許権者に対し、当該特許権の移転を請求することができる。
2. 前項の規定による請求に基づく特許権の移転の登録があつたときは、その特許権は、初めから当該登録を受けた者に帰属していたものとみなす。当該特許権に係る発明についての第65条第1項又は第184条の10第1項の規定による請求権についても、同様とする。
3. 共有に係る特許権について第1項の規定による請求に基づきその持分を移転する場合においては、前条第1項(73条1項)の規定は、適用しない。
2.特許法74条の趣旨
(2-1)1項の趣旨
特許権は財産権ゆえ、本来、特許権者の意思によることなく、他人に移転されることはありません。
しかし、冒認出願や共同出願違反があった場合に、真の権利者が自ら特許出願して特許権を取得する道を断たれるのは不合理です。
現行法上では、新規性喪失の例外30条の規定を利用した新たな特許出願に対する救済措置が存在しますが、かかる措置は、冒認出願等の公開から6ヶ月以内に真の権利者が冒認出願に気付いた場合にのみ有効です。従って、公開から6ヶ月経過後に冒認出願に気付いた真の権利者にとっては対応策となり得ません。
このような背景の下、特許法74条第1項を新たに設けて、一定の条件下で、特許権の移転の請求ができるようになりました。
(2-2)2項の趣旨
真の権利者への移転登録の効果を特許権の設定登録時まで遡及させたのは、1項で真の権利者への移転登録を認めたとしても、当該特許に無効理由(123条1項2号(共同出願違反の無効理由)、同項6号(冒認出願の無効理由))が残存したのでは、移転登録自体が無意味なものとなってしまうからです。
2項の規定により、特許権設定登録後、特許法74条1項の規定に基づく移転登録までの間の特許権侵害による損害賠償請求(民709条)等は、当該移転登録を受けた者に帰属することになります。
さらに、補償金請求権(65条1項、184条の10第1項)につきましても、当該移転登録を受けた者に帰属します。
(2-3)3項の趣旨
一定の条件下で、特許法74条1項の規定に基づく移転を認めても、特許権が共有に係る場合、他の共有者の同意が無ければ特許権を譲渡できないことになります(73条1項)。
そこで、3項では、特許権が共有に係る場合であって、特許法74条1項の規定に基づく請求により持分を移転する場合には、例外的に、73条1項の規定は適用しない旨を規定しています。
すなわち、例えば、甲と乙が共同で発明した後、甲に無断で乙と丙が出願して特許権を取得した場合、乙の同意がない限り、甲の丙に対する特許権の持分の移転請求が認められないと解されるおそれがあります。
しかし、当該特許権は、甲と乙の共有に係ることが適切ですから、丙から甲への移転が73条1項の規定により妨げられることがないよう、74条1項の規定に基づいて特許権の持分の移転をする場合には、73条1項の規定が適用されないことを確認的に規定しました。