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KUNPU NEWS

2014年7月号のKUNPU NEWSをアップしました。
2014.07.30
ここでは、「職務発明制度の見直し」についてご紹介します。

 1.職務発明制度の趣旨
職務発明は、その性質上使用者等(使用者、法人、国又は地方公共団体)の業務範囲に属し、かつ、その発明をするに至った行為がその使用者等における従業者等(従業者、法人の役員、国家公務員又は地方公務員)の現在又は過去の職務に属する発明と定義されています(特許法第35条第1項)。
職務発明制度は、使用者等が組織として行う研究開発活動が我が国の知的創造において大きな役割を果たしていることにかんがみ、使用者等と従業者等との間の利益の調整を行うことにより、従業者等の権利を保護して発明のインセンティブを喚起するとともに、使用者等の研究開発投資等を促すことを目的としています。

2.職務発明制度の変遷
職務発明制度の歴史を辿ってみますと、明治42年法においては職務発明の特許を受ける権利は原則として使用者に帰属させるとする使用者主義の立場をとっていましたが、大正10年法以降は発明者主義の立場に移行しました。現行の職務発明制度は平成16年法に基づいています。職務発明制度の変遷の詳細は以下のとおりです。
(2-1)明治42年法
職務上又は契約上なした発明の特許を受ける権利は、原則としてその職務を執行させた者に帰属するとして使用者主義の立場をとっていました。
(2-2)大正10年法
職務発明の定義、職務発明以外の発明の予約承継の無効、使用者の取得する法定実施権、予約承継に係る発明者の補償金請求権、裁判における補償金の算定等について規定し、発明者主義を基本的理念としました。
(2-3)昭和34年法
「特許を受ける権利」や「特許権」は原始的に当該従業者である発明者に帰属するという発明者主義をとり、使用者への承継に際しては相当の対価(補償金)の支払を受ける権利が従業者にあるという権利主義を基本的理念としました。
(2-4)平成16年法(平成17年4月1日施行)(現行)
平成16年法の職務発明制度は、職務発明に係る「相当の対価」を使用者等と従業者等の間の「自主的な取決め」にゆだねることを原則としています。しかし、契約、勤務規則その他の定めに基づいて対価が支払われることが不合理と認められる場合等には、従来の職務発明制度と同様に、一定の要素を考慮して算定される対価を「相当の対価」としています。

3.職務発明制度の見直しの背景
上記のように、職務発明制度は時代と共に変遷を遂げています。平成16年法に基づく現行の職務発明制度により、使用者等にとって発明の対価額の予測可能性を高めるとともに、従業者等の発明評価に対する納得感を高める法制度となりましたが、依然として発明の対価を巡って訴訟に発展するケースが少なくありません。
このため、「日本再興戦略」(平成25年6月閣議決定)において、「~企業のグローバル活動を阻害しないための職務発明制度の見直し~企業のグローバル活動における経営上のリスクを軽減する観点から、例えば、職務発明の法人帰属化や使用者と従業者との契約に委ねるなど制度を見直し、来年(平成26年)の年央までに論点を整理し、来年度(平成26年度)中に結論を得る」ことが掲げられました。
これを受けて、特許庁は、「産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会」を設置し、研究者の研究開発活動に対するインセンティブの確保並びに、企業の国際競争力の強化及びイノベーションの促進の観点から職務発明制度の見直しを審議することとなりました。

4.職務発明制度の見直し
平成26年6月18日に開かれた産業構造審議会知的財産分科会特許制度小委員会にて、特許を受ける権利、特許権等の権利帰属を、一定の条件を満たせば現行の従業者等帰属から使用者等帰属にする制度見直しの合理性がほぼ認められました。
ただし、従業者等の研究開発活動に対するインセンティブの確保と、使用者等の国際競争力及びイノベーションの強化とを共に実現しながら、その一定の条件の具体的な内容をどのように取りまとめるかは難航しそうです。例えば、職務発明活動の成果として従業者等に支払う成功報酬の金額を高額にする方向の内容で条件を設定すれば、使用者等の対価の支払いに対する負担が増大し、ひいては使用者等のグローバル活動における経営上のリスクが増大するおそれがあります。一方、従業者等に支払う成功報酬の金額をあまり高額にしない方向の内容で条件を設定すれば、従業者等の発明への意欲が減退し、研究開発活動に対するインセンティブの確保が困難となります。
今後、従業者等帰属を使用者等帰属に移行する条件として、どのような具体的な内容を条文に盛り込んで法改正をしていくかは注目していく必要があると思います。
政府は、来年の通常国会での特許法改正を目指しています。