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KUNPU NEWS

2013年11月号のKUNPU NEWSをアップしました。
2013.11.26
ここでは、欧州の特許制度で、これから改正される内容について、2点ご紹介させていただきます。

1.分割出願の時期的制限の緩和
(1)まず、1点目は、欧州特許で分割出願をできる時期が親出願の係属中であればいつでも可能になるということです。
2010年に分割出願をできる時期が最初の拒絶理由通知(または単一性違反の通知)から24ヶ月に制限される改正がなされていました。しかしながら、今回の改正により、この最初の拒絶理由通知等から24ヶ月までという制限が廃止され、上記のように親出願の係属中であればいつでも可能になります。
この新法は、2014年4月1日以降に係属中の全ての出願に適用されます。
(2)一方、この改正と共に、2世代目以降の分割出願には追加手数料が課されることになります。この追加手数料の額は、世代が進むほど高額になり、ある世代に達すると定額になります。
そもそも、上記の24ヶ月の制限は、分割出願制度の利用の濫用防止のために設けられた規定であると言えますが、その制限が廃止され、分割出願制度の利用が濫用されることを防止するべく、この追加手数料の規定が設けられたと考えられます。なお、現在のところ、具体的な追加手数料の額等については明らかにされていません。

2.欧州単一特許の制度の実現
(1)2点目は、欧州議会で以前から審議されている、欧州単一効特許(European Patent with Unitary Effect, 以下「単一特許」)と統一特許裁判所(Unified Patent Court)の法的枠組みのパッケージの導入です。
単一特許については、2015年頃に制度の施行がなされるのではないかと言われています。
(2)まず、この単一特許の制度を簡潔にまとめますと、現状イタリアとスペインを除く25のEU加盟国の間で単一的な効力が与えられる特許制度のことを言います。
この単一特許の制度は、欧州では数十年間実現を待ち望まれてきた制度であり、手続きの簡素化、権利維持の費用等の低減により、近年、米国や中国に比べ少なかった特許件数の増加等が期待されています。
一方、この単一特許の制度が導入されても、欧州での特許制度では、特許査定後、欧州各国毎に有効化の手続きを行う従前の制度も併存することになります。
すなわち、特許権者は、単一特許の制度で権利化するか(以下、単一特許ルート)、これまで通りの制度で権利化するか(以下、EPCルート)について選択することができます。
(3)ここで、単一特許ルートで権利取得する場合の費用について検証してみます。
EU加盟国27ヶ国で権利取得を希望される場合、これまで通りEPCルートを選択すると各国での権利化の際に、有効化のための費用、各国の公用語への翻訳の費用および各国毎の特許維持の年金がかかります。
これに対し、単一特許ルートを選択すると、イタリアとスペインについては、EPCルートを採用しなければなりませんが、残りの25ヶ国についてはEPCルートで権利化する際に必要であった費用が実質的に一本化されるため、特許査定後の費用を大幅に抑えることができるというメリットがあります。
しかしながら、単一特許ルートでは、EPCルートで1ヶ国権利化した場合にかかる維持年金よりも多額の維持年金がかかると言われています(単一特許ルートでの特許維持年金の具体的な額についてはまだ明らかにされていません。)。この点、権利取得を希望するのが、2、3ヶ国程度の少数の国だけである場合、EPCルートでは有効化のための費用、各国の公用語への翻訳の費用および各国毎の特許維持の年金はそれ程かかりません。
そのため、多数の国で権利取得する場合には、単一特許ルートを採用するのがよいと言えますが、少数の国で権利取得することを希望される場合には、これまで通りのEPCルートを採用する方がよいかもしれません。
(4)また、従前のEPCルートを利用した場合では、国毎に権利が発生するため、ある国で権利が無効になっても、他の国の権利は有効に存在します。一方、単一特許ルートを利用した場合は、権利はあくまでも一つの権利であるため、この一つの権利が無効になると、欧州での権利は全て喪失してしまうことになります。この点も単一特許の制度を利用する上では、留意しておく必要があると言えるでしょう。
(5)このように、今後、単一特許の制度が実際に導入されると、欧州での権利化においては、状況に応じて単一特許ルートを採用するか、EPCルートを採用するかを検討していくことが必要になってきそうです。