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知財トピックス

パロディ商標を考える・・フランク三浦事件から
2017.03.09
スイスの高級時計ブランド「フランクミューラー」の関連会社が、大阪の会社が商標登録を行った「フランク三浦」の商標登録無効を訴えた裁判で、「フランク三浦」側の勝訴が確定しました(即ち、商標登録は有効)。この裁判の射程から「パロディ」について、少し考えてみたいと思います。

「パロディ」とは、一般に、他の芸術作品などを揶揄、風刺、批判等する目的で模倣する行為と概ね定義できると思います。大阪市の会社が販売する「フランク三浦」という5千円前後の時計は、その称呼や文字盤のデザイン等の関係から、その多くの商品が100万以上の単価である高級時計ブランド「フランクミューラー」を連想させるチープなパロディ商品と言えます。大阪の会社の代表者が「うちはとことんチープに行くのがコンセプトなので」と述べたことも裁判では取り上げられており、大阪的に言えば、まさにギャグやお笑いの世界のパロディ時計と言えるのでしょう。

ここで、今回の裁判では、「フランク三浦」と「フランクミューラー」が需要者において混同するか否かが商標登録の有効性の判断ポイントであったのですが、本裁判では両商標は「称呼」において類似性が確かにあるけれども、外観や観念で明らかに区別でき、そして、フランクミューラーという高級時計の販売単価とそれよりもかなり低額なパロディ時計「フランク三浦」は、その指向性は全く異にするから、需要者は両商標を混同することは到底考えられないという判断に基づいて、「フランク三浦」の商標登録は有効という判断となりました(特許庁の商標登録無効の審決の取消)。




しかし、この事件は、需要者の混同の有無という点でパロディブランドの商標登録の有効性が争われた裁判事件であって、それ以上でもそれ以下でもないように思います。即ち、この事件をもって、パロディブランドやパロディ商品が知財面で全く問題がないという判断にならないように注意が必要と思います。例えば、「フランク三浦」なるパロディ時計について今後もその販売が継続された場合、「フランク三浦」時計を実際に購入した需要者において、「フランクミューラー」ブランドを連想したことやフランクミューラーの独創的な文字盤デザイン(形態)の類似性がその購入動機になっていたような事情が明らかになれば、著名ブランドへのただ乗り、ポリューション(ブランドを汚す)などの観点から不正競争防止法の差止請求等の争いとなる可能性が依然として残されていると思います。

商標登録やその有効性を争う場面でも、本事件のように販売単価に大きな差があるなどの特段の事情が無いのであれば、著名ブランドのパロディ商標の商標登録は認められない場合も多いのではないかと思います(商標法4条1項15号)。