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法制度・法改正

「除くクレーム」の取り扱いについて
2026.07.08
1.背景
拒絶理由通知への対応として、「除くクレーム」とする補正が行われることがある。これに対し、「除くクレーム」とする補正がされた案件について、適切な審査を求める声が寄せられていることを踏まえ、特許庁は、その審査上の考え方を明確化するため、特許・実用新案審査基準及び審査ハンドブックを改訂した。
 
ここで、「除くクレーム」とは、請求項に記載した事項の記載表現を残したままで、請求項に係る発明に包含される一部の事項のみをその請求項に記載した事項から除外することを明示した請求項をいう。
もっとも、引用発明と重なる態様を除外したからといって、当然に進歩性欠如の拒絶理由が解消されるものではない。除外後の発明についても、引用発明及び出願時の技術常識に基づき、当業者が容易に想到し得ると判断される場合には、進歩性欠如を理由として拒絶査定がされる可能性がある。
 
また、「除くクレーム」における「除く」部分の内容によっては、審査段階において、以下のとおり、進歩性欠如(特許法第29条第2項)として拒絶査定される可能性があるほか、明確性要件違反(特許法第36条第6項第2号)や新規事項の追加(特許法第17条の2第3項)の拒絶理由が通知される可能性がある点にも留意する必要がある。
 
2.進歩性について
新規性等の拒絶理由に対して「除くクレーム」とすることにより特許を受けることができる発明は、拒絶理由で指摘された引用発明と比較すると技術的思想としては顕著に異なり本来進歩性を有するが、たまたま引用発明と重なるような発明である。
そのため、引用発明と技術的思想としては顕著に異なる発明ではない場合は、「除くクレーム」とすることによって進歩性欠如の拒絶理由が解消されることはほとんどないと考えられる。
 
したがって、たとえ引用発明と重なる態様を除くような補正を行ったとしても、引用発明の内容だけでなく、技術常識も把握している当業者の立場からみた場合には、引用発明に基づき依然として容易に想到し得ると審査官に判断され、拒絶査定される場合があることに留意する必要がある。
 
3.新規事項の追加について
また、「除くクレーム」とする補正については、当初明細書等に記載した事項との関係において、新たな技術的事項を導入するものであるか否かについても慎重な検討が必要となる(知財高判平成20年5月30日(平成18年(行ケ)10563号)「ソルダーレジスト」大合議判決参照)。
 
また、出願人は、補正をしようとするときは、当該補正が当初明細書等に記載した事項の範囲内のものであることを十分に説明することが要請される。
特に、出願人が「除くクレーム」により進歩性欠如の拒絶理由を解消したと主張する場合には、請求項に係る発明が、その技術的思想が引用発明の技術的思想と顕著に異なるものではない発明から、引用発明の技術的思想と顕著に異なるものへと変化している可能性があり、当該補正により新たな技術事項が導入されているという疑義が存在する。
 
したがって、「除くクレーム」とする補正を行う場合には、当該補正により技術的思想が変化していないことや、当該補正は新規性欠如の拒絶理由を解消するためのものであって、補正前から進歩性はあったこと等、当該補正が新規事項の追加にはあたらない根拠を意見書等で説明することに留意する必要がある。
 
4.明確性について
「除くクレーム」とする補正を行う場合には、以下の観点で明確性が欠如しないよう留意する必要もある。

・「除く」部分が、請求項に係る発明の大きな部分を占める又は多数にわたる場合には、一の請求項から一の発明が明確に把握できないことがある点
・「除く」部分が、拒絶理由通知で引用された文献中の表現を借りて記載されている場合には、たとえ出願時の技術常識を考慮しても、実際に当該文献の内容を確認しない限り当該記載が特定しようとする内容を明確に把握できない場合がある点
 
以上のように、今後の拒絶理由通知の対応においては、上記の点に注意して対応すべきである。
なお、「除くクレーム」を用いて反駁する場合は、手続補正書等の提出前に、ガイドラインに沿っているか否かを審査官に面談で確認することも有用であると考えられる。
 
参考:「除くクレーム」とする補正について | 経済産業省 特許庁