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法制度・法改正

欧州統一特許制度がまもなく発効します
2022.07.20
欧州の統一特許制度(参加加盟国のすべてに特許の効果が及ぶ制度)が、2022年末から2023年初頭にかけて発効する見込みです。現在、ドイツの批准を待っている状況で、この批准の4カ月後に制度の運用が開始されます。
なお、本新制度が開始時点での参加国は、オーストリア、ベルギー、ブルガリア、ドイツ、デンマーク、エストニア、フィンランド、フランス、イタリア、リトアニア、ルクセンブルク、ラトビア、マルタ、オランダ、ポルトガル、スウエーデン、スロベニアの計17ヵ国で、以後、キプロス、チェコ、ギリシャ、ハンガリー、アイルランド、ルーマニア、スロバキアが順次参加する可能性があります(計24ヵ国)。
この新統一制度により、欧州で特許を取得する方法は、①特定の国へ国内出願する方法、②従来からの欧州バンドル特許制度を利用する方法(バリデーション必要)、③新統一特許制度を利用する方法(バリデーション不要)、以上3つとなります。なお、新統一特許制度の出願手続は②と同様に欧州特許庁(EPC)に対して行い、特許公告から1カ月以内に統一特許登録申請(*翻訳も同時提出)を行うことにより統一特許化できます。
*翻訳:英語出願のときはドイツ語又はフランス語の翻訳、ドイツ語やフランス語での出願の場合は英語の翻訳が必要になります。特許公告から1カ月しかないので、特許予告(EPC規則71(3))が出た時点で、統一特許を選択するかを判断し、翻訳の準備を開始することが推奨されます。

 新統一特許制度では、②の方法で必要であるバリデーション及びその翻訳のコストが削減できることや年金を統一特許裁判所(UPC)へ支払えば済むようになることなどがメリットとされています。
 しかし、この年金額が参加国数に照らせば割安とは言え、数か国分に相当する金額となるため高くなること、加え、特許の取消・無効の手続が統一特許裁判所(UPC)で一括で取り扱われるようになるため、仮に取消や無効の判断がなされるとすべての参加加盟国で特許の取消や無効となってしまう問題(リスク)も抱えています。このようなことから、EPCへ欧州出願して特許された場合では、統一特許制度を選択しないこと(Opt-out)も慎重に検討する必要があります。特許取得を望む国が、ドイツ、フランス、イタリアなどの主要国に限定される場合などでは、従来の欧州バンドル特許制度を選択することも検討に値すると思われます。