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KUNPU NEWS

2015年11月号のKUNPU NEWSをアップしました。
2015.11.13
平成27年6月5日に、プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(PBPクレーム)に関する最高裁判決が出されました。本判決では、PBPクレームに関する明確性要件等の考え方が説示されており、特許庁では、この判決に整合した新しい審査基準の運用を平成27年7月6日から開始しました。この新しい審査基準では、『物の発明に係る請求項にその物の製造方法が記載されている場合は、審査官が「不可能・非実際的事情」があると判断できるときを除き、当該物の発明は不明確であると判断し、拒絶理由を通知します。』と記載されています。

それでは、「その物の製造方法が記載されている場合に該当する」類型としてはどのようなものが挙げられるのでしょうか?以下に、その類型を記載します。

類型(1-1):製造に関して、経時的な要素の記載がある場合
具体例:「支持体に塗布し、液晶相に配向する温度で光照射してなる偏光子」
類型(1-2):製造に関して、技術的な特徴や条件が付された記載がある場合
具体例:「モノマーAとモノマーBを50℃で反応させて得られるポリマーC」

類型(1-3):製造方法の発明を引用する場合
具体例:「請求項1~8いずれかの製造方法で製造されたゴム組成物」

これに対し、「その物の製造方法が記載されている場合に該当しない」類型として、以下のものが挙げられます。

類型(2):単に状態を示すことにより構造又は特性を特定しているにすぎない場合
具体例:「樹脂組成物を硬化した物」

明確性違反の拒絶理由が通知された場合には、出願人は、当該拒絶理由を解消するために、反論以外に、以下の対応をとることが可能です。

ア.該当する請求項の削除
イ.該当する請求項に係る発明を、物を生産する方法の発明とする補正
ウ.該当する請求項に係る発明を、製造方法を含まない物の発明とする補正
エ.「不可能・非実際的事情」についての意見書等による主張・立証

弊所でも、この審査基準の運用が開始されてから、既に何度か明確性違反の拒絶理由を受け取っております。基本的な反論方針と致しましては、上記ア.~ウ.を選択することになりそうですが、補正をすることにより拒絶理由が解消されるか否かについては、現時点では担当審査官に一度確認することをお薦めしております。その理由と致しましては、この審査基準の運用が開始されてからまだ日が浅く、特許庁から提示されている具体例や判断の基準となる事例の蓄積が少ないことが挙げられます。

弊所では、上記イ.で対応することにより、明確性違反の拒絶理由を解消した事例がございます。また、以前に特許庁審査基準室に電話で問い合わせた際に、担当者の方から、「物の発明から物を生産する方法の発明に変更すれば、PBPクレームに関する審査基準はその時点で適用されなくなります。」とのアドバイスも受けました。

また、上記エ.で反論する場合には、例えば、(ⅰ)出願時において物の構造又は特性を解析することが技術的に不可能であった場合、(ⅱ)特許出願の性質上、迅速性等を必要とすることに鑑みて、物の構造又は特性を特定する作業を行うことに著しく過大な経済的支出や時間を要する場合、に該当することを意見書等で主張・立証することになります。これに対し、特許庁審査基準室の担当者の方は、「本願発明の内容に沿って、具体的に説明する必要があり、単に上記の(ⅰ)又は(ⅱ)に該当する、という主張のみでは認められない。」と仰っていました。

なお、弊所では、上記エ.で対応することにより、明確性違反の拒絶理由を解消した事例もございます。当該事例では、応答書面提出前に担当審査官に確認をとった上で、「出願に係る発明(組成物)をその構造又は特性により具体的に記載するためには多種多様なパラメータ等が必要であるため、当該発明をその構造又は特性により直接特定することはおよそ実際的ではない」旨を意見書にて主張しました。

今後も、PBPクレームに該当することによる拒絶理由が通知されることが予想されます。それに伴い、PBPクレームに関する審査基準の解釈がより明確となることや、現行の審査基準自体が改正されることなども予想され、PBPクレームに関する特許庁の動向には引き続き注目したいところです。